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評伝シャア・アズナブル 《赤い彗星》の軌跡 下巻 (KCピ-ス)レビュー
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評伝シャア・アズナブル 《赤い彗星》の軌跡 下巻 (KCピ-ス)
皆川 ゆか

定価: ¥ 600
販売価格: ¥ 600
人気ランキング: 3969位
おすすめ度: 
発売日: 2006-12-07
発売元: 講談社
発送可能時期: 通常24時間以内に発送
グリプス戦役を紐解く良書
●前にも述べましたがあの複雑なグリプス戦役の概要を知るにはとても良い本です。終局におけるさまざまな拠点の争奪戦と破壊、内紛の勃発、子供の頃は訳わかりませんでした。その手助けとして年表も脚注も星図等の簡潔で要領を得たイラストもあり非常に充実しています。そして本文の記述自体も人物描写のみではなくストーリーの要所要所の解説をないがしろにしていないので非常に分かりやすかったです。ネットにもガンダム情報は溢れていますがストーリーの概要を手短に知るサイトは稀です。また文字情報に偏り舞台の位置関係まで把握できる視覚情報を揃えている作者となるとさらに少なくほとんど0です。●あとガンダムって意外と地球にいるときの話多いんですね。特にゼータなんですけど。宇宙と行ったり来たりしているのが面白かったです。●ストーリーは分かるのですがシャアに関してはやはり不可解なわだかまりしか残りませんでした。ただアクシズ出奔に関する解説が前巻に引き続き本書でも若干補足されていました。これを読んで前よりはなんとなく彼の気持ちが理解できたような気がします。もっと感情的で本人の価値観に根差す理由なんですね。その気持ちは理解できますがだったらあんなに危険視したハマーンに後々まで行動の自由を制約すべく一切のはかりごとを巡らせなかったのは完全に間抜けですね。一刻も早くアクシズを出たい息が詰まりそうな気持ちは理解できますが彼女へ向けてたくさん抗争・内紛の火種をばら撒いてくるべきでした。グレミー=トトを早々に焚き付けてその気にさせてから離脱すればハマーンの躍進なんてまったく芽がなかったでしょう。とにかくアクシズが嫌なら嫌なりに後のことを考えてたくさんトラップを仕掛けてくるべきでした。●やはりシャアの記述中心ですのでカミーユやブライト等はかなり言及が少なめです。それよりさらにサブの登場人物に関してシロッコやハマーンを除いては何も期待しないでください。ただレコア=ロンドに関しては他より念入りに解説しています。●強化人間に関してシャアはあまり深い見解を持ってないようです。とにかく色々な悲劇の元になる彼らですがシャアはほとんど意に介していないのが意外でした。戦術的な使い勝手の良さが他の害を上回ってお手軽な感覚しかないみたいだしそれからどんな手段であれニュータイプに開眼する分には全肯定のようです。もうちょっと葛藤があっても良さそうなのに。それからシリーズがあとになるにつれて強化人間の副作用が弱まっている気がするのですが何か一言説明して欲しかったです。●ガンダムというのは少年少女が相当犠牲になっていますがこれに出てくる大人がほとんどそれを気にしていないのがすごく私には不誠実に映ります。この本の作者もあまりそのあたりには踏み込みたくないようです。やはりここを突っ込まないと真の評伝にはならないと私は考えます。あえて無自覚に己を置いているのでしょうか。●第一次ネオジオン戦争時のシャアは何をしていたのかつまりダブルゼータから逆襲のシャアまでの時代です。これもほとんど言及ありませんでした。ちょっと期待していたのですが何も書いてないです。ミネバの養育係とか。それからネオジオンの戦力としてハマーン指揮下とシャア指揮下における構成員の同質性・継続性についてこの辺も若干説明がが甘いというかほとんど具体的な説明はありません。いまいち分かりませんでした。ただ旧ネオジオンの中核はかなりの被害を受けたようです。●ニュータイプでもなぜ構想力や展望を描ける人と単なる卓絶したパイロットで終わる人間という違いが生じるのかこのあたりも何か一言欲しかったです。単なる知性の問題だとニュータイプって運動神経とか勘が凄いだけってことになりますね。認知の広がりはなぜ時代を作る才にはつながらないのでしょう、ジュドーとか。●二流と一流はちょっとあまりにもな喩えですね。自分としては超一流と一流くらいの違いだと思いますが。
一流の見識と二流の才能
リアルタイムで見ていた頃、正直「Zガンダム」と「逆襲のシャア」でのシャアはよくわからなかった。中途半端とい
うかなんでこういうことするの?(もしくはしないの?)疑問に思うことしきり。とくに「逆襲のシャア」がわからな
かった。池田秀一氏も色々とまどうことがあったと確か自著に書いていたと記憶する。
で、この本を読んでそこらへんかなりクリアになった。「仮面」「ペルソナ」「一流の見識と二流の才能」をキー
ワードに展開した解釈は説得力あり。シャアを通して「Zガンダム」と「逆襲のシャア」という作品の構造も理解
できた良書。
だからシャアに魅かれたのか
小さい頃、シャアはとてもカッコイイ存在だった。
《赤い彗星》はアニメでは敵側という立場にいながら、主人公であったアムロよりも魅力があった。
でもそれは、単に強いとか、セリフが渋いとか、表面的な部分に魅かれたのではなく、
苦悩しながらも前へ進もうとする姿勢に魅かれていたのかもしれない。
子供の頃には意識しなかったが、シャアは決して成功者ではない。
輝かしい1年戦争前半に比べると、後半は惨めなくらいその名声が地に堕ちていく。
シャアは「自分が二流であることを自覚しながら、一流の目標のために動かねばならぬ不幸な人」であった。
そしてその立ち位置は、「逆襲のシャア」に於いても変わることはなかった。
人間誰しも、今そのときの力では持て余すような目標に立ち向かわざるを得ない状況に置かれることがある。
それでもなお、目的に向かって進む姿にとても身近なものを感じるからこそ、シャアという存在に魅かれたのかもしれない。
この本は、ガンダムをある程度知っていなければ読んでもさっぱりでしょう。
逆に、ガンダム世代は読んでみましょう。
苦悩の人生を歩んだ人間が、確かに存在したように感じることができます。